寒さの熱
朝起きて一番にすることはなんですか?
私が朝起きて一番にすることは洗顔です。もう何年も前から洗顔フォームを使わなくなり、水道水だけで顔を洗います。
そしてアルゴンオイルを1滴、手のひらにとって両手で温めて、濡れたままの顔と首をオイルのついた手でマッサージして、それから化粧水をつける。
これが私がベッドから出て最初にする一番の活動です。
それからiPhoneのポッドキャストを起動し、NHKラジオをつける。夏時間が終わったいま、日本との時差は14時間なので、同じ日付の夜8時とか9時とかのニュースを聞く事ができます。
NHKラジオを流したまま化粧をしていると、日本の主要なニュースの大抵は網羅できます。地震も台風も土砂崩れも流行語大賞も外国人材受け入れの問題も総理のAPEC参加も。
日本もだいぶ気温が下がってきた様子も伝えられます。明日は暖かくしてお出かけくださいね、といつもの声でフレンドリーアドバイスが耳に入ってくる。
朝晩の気温が一桁になると、肌寒く感じますよね。
2年前のいま頃・・
ある日、世田谷区と杉並区を隔てるあの橋を渡っていたら
片思いしていた後輩とすれ違って。私はすれ違ったことに気がつかなくて。彼が私の名前を読んで呼びとめてくれて。あの時お気に入りのキャメル色のコートを着ていたな。日本で着る真冬のコート。
寒かったな。でも、その寒さって温かかったな。
NHKラジオで天気予報を聞いていたら、そんな東京の初冬の空気が脳裏にふと思い出されて、懐かしさがツーンと込み上げてきます。
オタワではもう、日中の最高気温もすっかり気温が氷点下です。
みて、今この瞬間、外は−4℃。
−4℃か。今日はそんなに寒くない。
・・・
今や、1℃や2℃という数字を見ると「めちゃあったかいじゃん」という錯覚に陥ってしまう。
まだカナダの冬の感覚に染まってない人に対して「だって雪が溶ける温度だよ?あったかいじゃん?」とあくまで自分の正当性を主張する、めんどくさいカナダかぶれ日本人と化しています。
気温がプラスになると、道路の雪と氷が全部溶けてぐちゃぐちゃになるので、好きじゃありません。このまま春までずっと、氷点下のままで、いい。
これからどんどん寒くなって、
1ヶ月後には最高気温が−15℃とかになって、
2ヶ月後には最高気温が−20℃とかになって、
わずかに露出したほっぺたの水分が凍って肌がピリッとし、
吸い込んだ息で鼻毛が凍って鼻腔の奥がパリパリし、
空中の水分が凍ってダイヤモンドダストがキラキラし、
道路の水分が凍って白いチョークを擦ったような荒れた景色となり、
この世界の水分という水分が全部凍っていく、
天上では太陽がさんさんと輝きながら、太陽はひたすら無言で、温かみが一切この世から消えて、地上の全ての命を奪うような、どこまでも無慈悲な凍てつく気温の中を歩いていると・・
命という命のすべてがあることの尊さを思い出さずにはいられません。
だから私は、真冬の朝、どんな天気でも、職場まで1.5キロ歩いて出勤するのがとても好きです。寒ければ寒いほど、凍った空気が刺さって痛いほっぺたを感じながら・・
それでも木々は生きていて、それでも人は生活してて、−20℃になろうが、−30℃になろうが、それでも花が咲き乱れる春が来年もやってくるって、なんてすごいんだろうって・・−15℃くらいの刺すような空気の中を1.5キロも歩いていると、そんな風に厳かな気持ちになります。
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